2019.08.01 Thursday

リペア ファイル その553

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    ギブソン J−45 / トップ割れ補修

     

    この夏はおかしな天候で、6月初旬は暑くその後長い梅雨に入り明けたら猛暑 とその気温の落差に身体も付いていけません。そういうときはギターも同じでコンディション維持が難しくなります。

    オーナーがうっかりギターを自動車内で置き忘れ、気が付いたときにはトップがセンターライン沿いに切れて割れてしまったそうです。高温により極度に乾燥が進んだ結果だと推測します。

     

    長年連れ添ったギターで十分乾燥していると思われる個体でも急激な変化にはトラブルが起こるのですね。

     

    持ち込まれたギターを壁で吊るして1週間ほど置いておいたら割れ部は自然に回復しました。

      

    その割れ部に接着剤を摺り込んでサイドから圧力を掛けて接着しました。

     

    割れ部に沿て”パッチ”を貼っていきます。私は0.5ミリの薄いマホガニーをポンチでくり抜いて木目が交差するように張り合わせたオリジナルの”パッチ”を使います。こうすることでどの位置で貼り付けてもトップに対して木目切れがないように貼ることが可能になります。伝統的な”パッチ”はスプルース材を◆型にして貼り付けるのですが、トップ裏に正確に木目に垂直方向に貼るのは難易度が高く現実的でありません。トップを剥がして目視できるような状態でのみ有効かと思います。(または口輪付近のみ)

      

    ブリッジ下側はトーンバーが2本入っているのでそこを避けながら”パッチ”をロングクランプを使って貼っていきます。

     

    段差がないように剥ぎ合わせたので接着後は水研磨してバフで磨いて完成です。塗装の必要はありませんでした。(塗装なして仕上げるように作業したともいえる)

      

    今回はトップの回復がよかったのでパッチ補強で終えましたが、ケースバイケースで隙間に板を差し込み方法も考えられます。参照:http://blog.9notes.org/?eid=811

     

    ヘッドはヴィンテージタイプでクルーソンペグ。

      

    暑さによるネックの被害はありませんでした。

     

    アンダーサドルピエゾが仕込まれていましたが、サドルにはこんな仕掛けがされていました!

    「音の分離」がよくなるように”橋げた状”に加工されています。

      

    弦を張っても変化なし。これで大丈夫でしょう。補強によるサウンドへの影響もほとんどなし。オーナーも納得されていました。

     

    それにしても自動車で移動するのが当たり前の時代、ギターを車内に置いておかないといけない状況って案外あると思われます。そんなときは、ケースから出して直射日光が当たらない後ろ座席の足元に白っぽい布を掛けておくのが、ひとつの方法です。本当は少し窓を開けておくといんですが・・・・昨今は盗難も怖いし、難しいかな。

    まだまだ暑い日々が続きます。皆さまもご自愛ください。2019/8/1

     

     

    ギブソンギター修理 インデックス:http://9notes.jugem.jp/?eid=631

     

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    2019.07.22 Monday

    リペア ファイル その551

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      Tunesaburou Kurosawa  1B  /  表板割れ・表板塗装・サドル交換・糸巻交換

       

      『クロサワ楽器』の創始者でクラシックギター製作家でもあった”黒澤常三郎”のギターです。半世紀以上前に購入したというこのギターの出音は、ほかの名器に引けを取らないとのこと。

        

      トップに陥没と割れがあったのを修復しました。​

       

      サウンドホール下の力木に強い力が加わったのか、裂けて割れて陥没しています。

        

      割れ部に接着剤を流し込み、外からはクランプで中からはジャッキで力木を持ち上げて元通りにします。

       

      トップの腰に辺りにひび割れと打痕があります。

        

      隙間に接着剤を流し込んで割れ部を留めます。

       

      ブリッジ下の表板中央が割れて隙間ができていました。

        

      引き裂かれた「夏目」部の隙間を修正しながらトップと同材の「杉(シダー)」を用意して「夏目」部をスライスしておきます。(針葉樹は夏目と冬目がハッキリしていますね)

       

      シダーピースを割れ部に合うように成型して、接着・ジャッキアップ・クランピングします。

        

       

      飛び出たところをカンナで取り除き、サンディングしておきます。

        

       

      トップの腰のひび割れ部とブリッジ下の割れ部を内側から補修するため”パッチ”を製作します。当工房では、極薄いマホガニー材2枚を木目が交錯するように張り合わせ”パッチ”としています。

        

      軽さと強さを兼ね合わせた”パッチ”をすべての割れ部裏に当て接着しました。これで補修は万全です。

       

      さて次は割れ部が目立たないように塗装に入ります。

        

      全体を軽くサンディングしてクリアーラッカーを吹き付けました。

       

      完成!(色が落ちた部分は筆でタッチアップして色調整してあります)

        

      古い楽器だったので塗装をはじくピンホールが結構あって、思ったより時間がかかってしまいました。

       

      動きが悪くなった古い糸巻をゴトー製の新品と交換しました。

        

      若干、新旧ポストの位置が合わなかったので修正しておきました。

       

      弦高を適正にするべくサドルも交換しました。

        

      指板はナット部から最終フレットにかけて薄くなっています。仕込み角度に変化を付けて音量アップを計るための工夫かと思いますが、50年前からこういう理論は経験上解っていたということなのでしょうか?(ラミレスでも同じような指板を見かけました)

       

      トップは杉、サイド&バックはローズ単板で全体的にシンプルな作りなれど、弾き込んであるため反応が良く音に深みを感じました。

      黒澤常三郎は、現在クラシックギター製作家として有名な黒澤澄雄の叔父だということですが、澄雄氏の息子さんの黒澤哲郎氏も活躍されていますから、日本の”ハウザー家”のようですね。

       

      クラシックギター修理 インデックス http://blog.9notes.org/?eid=648

       

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      2019.07.18 Thursday

      リペア ファイル その550

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        フェンダーJAPAN オールローズ・テレキャスター/ 塗装剥がし・ラッカー塗装(オープンポア)・フレット打ち換え・パーツ研磨

         

        ジョージ・ハリスン使用で有名な”オールロース・TE”のフェンダージャパン製モデル。すでにジャパンビンテージになるような楽器でしたが、オーナーは「ウレタン塗装」を「ラッカー塗装」に変更をご希望されました。すでに価値が定まった楽器でしたが、オリジナルに近づけるべく塗装をすべて剥がしました。

         

        フェンダージャパンは初期のロット以外は、ウレタン塗装がメインだと思います(ポリエステルの可能性もある)。耐久性もあり作業効率的もいいウレタンですが、塗装膜が厚く いかんせん”木材”の感触が感じられません。このモデルはオールローズとう贅沢な仕様ですので、木材本来の良さを生かすべく厚い塗装をひたすら剥がしました。

          

        埃まみれになる作業です・・・

         

        全塗装ですので指板面もやり直しです。

          

        ネックもローズ・ワンピース材でウレタン塗装を剥がした後は「フレット打ち直し」になります。(フレット打つ前に一度ラッカーで下塗りしてあります)

         

        ここからラッカー本塗りです。オーナーと話し合った上、カスタムショップ仕様であった木目が生きる「オープンポア」で仕上げることにしました。普通はサンディングシーラーで肉付けしますが、そうせず初めからニトロセルロース・ラッカーを繰り返し塗り上げて行きます。

         

        塗装が済んだらフレットに載った塗料を剥がしつつフレットレベルを整えます。指板レベルがよいと ほとんどフレットピークを修正しなくてもいいです。

          

        あとはで軽く丸めて磨き上げフレットワークは完成です。

         

        次は組み上げです。くすんだパーツは研磨材で磨いて元の輝きに。

         

        オールローズ製なのですべてソリッドだと思っていましたが、解体するとキャビティ部とその丁度反対の部分はくり抜いてありました。シンラインのような作りなのが解りました。軽量化が図られていたんですね。

         

        塗装面は、薄っすらと導管が浮いています。下地からニトロセルロース・ラッカーだけですので透明性が高く ローズの木目が鮮明です。ウレタン塗装でラッピングされていた木部が解放されて『木』そのものを感じられます。

         

        これだけのいい素材が使われていたのが、ウレタンでその質感が消されていたのではもったいなかったですね。オーナーの判断が正しかったのが、完成されたが楽器から証明されました。

         

        ボディ上下部の間にメイプル薄板がサンドイッチされています。

         

        全塗装で「Made in Japan」の文字は消えましたが、フェンダージャパンのシリアルナンバーはTEブリッジに刻印されているので出自は保証されています。貴重なローズ材のギターが生まれ変わった仕事でした。

         

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        2019.07.14 Sunday

        リペア ファイル その549

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          テーラー Baby Taylor /  トップ割れ補修(パッチ補強)・タッチアップ塗装

           

          可愛いミニギター”ベビーテーラー”。ほかにマーチン社やSヤイリ社製のミニギターも似たようなシリーズがありますが、「ちょっと弾き」に最適で人気があります。どれもトップ単板仕様でしたね。その結果、置かれた環境の条件が悪くなるとトップ中央で”剥ぎ切れ”が起こることがあります。トップの塗装が薄いためかと思われます。

            

          このギターも剥ぎ面が切れて隙間が出来ていました。湿度調整で隙間が回復する範疇を超えていましたので、薄く長く仕上げたスプルースピースを挿入して接着し修理しました。。

           

          スプルースピースを面一に整形して軽くサンディングしました。その後裏側から「パッチ」(補強材)を当てます。(パッチは極薄いマホガニーを2枚張り合わせて丸く抜いたものを使用しています)

            

          (当てがるところにパッチを仮置きしたカット)

           

          パッチに接着材を塗ってロングクランプで固定します。

            

          (パッチは2枚のマホ薄板の木目が交錯するように作ってあるので、どの方向で貼り付けても、トップの縮もうとする引っ張り強度に対して対応できます)(木材は木目に対して垂直方向の力に弱く引き裂けるを考慮してあるのです)

           

          タッチアップ塗装を施し全体のトーンを整えました。

            

           

          ネックはデタッチャブル式でなんと指板面からビス留めしてあります(合理主義の権化)。

            

           

          バインディングなど簡略していますが、うまくまとめているところがさすがテイラー社! デザインと技術力が光ります。

          量産品メーカーは低価格帯の製品と高級品と両方作らねばならず、低価格帯にもそのブランドに恥じない品質が求められます。そこをクリアーすることは難題ですが、クリアーできるからこそ一流メーカーたる所以でしょう。これは自動車メーカーを観てても同じだと思いました。

           

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          2019.06.26 Wednesday

          リペア ファイル その547

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            グレコ GO-900 /  電装系チェック・ポット交換・トグルスイッチ交換・ミニスイッチ交換・配線引き直し

             

            これぞ、まさにジャパンビンテージ。発売当時も高級機でした。スルーネック仕様/ナチュラル塗装(木材は国産材の栓/sen)パッシブPU搭載で全体に丁寧な仕事が施されています。フジゲン製だと思われます。

            友人から譲り受けたときにリアPUの調子がよくなかったそうです。詳しく調べてみるとトグルスイッチとリア ボリュームポットとリアのミニスイッチがダメになっていました。配線もなんやら手が加えられているようで怪しい・・・

             

            トグルスイッチを交換しました。残念ながらLPに使うようなトグルスイッチではなくボックスタイプでした(ボックスタイプは故障しやすいからなぁ)。

              

            2V2TにPUをパラレル/シリーズに切り替えるミニスイッチが2個ついています。

             

            スルーネックですので生地の貼り付け前に配線用に内部のくり抜き加工がされています。

             

            作業前と作業後のカット。ポットとミニスイッチを交換しました。手が加えられていた配線も確かめながら元通りにしました。(ごちゃごちゃしていて半田しにくい・・・)

              

            内部はアルミでシールドされています。

             

            チョコレート色のハンバッカーPUの底にはアルミ製のプレートが敷いてありアースも取ってあります。プレートにビス時下付けなのでエスカッションなくスマートなルックスです。

              

             

            ブリッジもテールピースもボディに固定され弦交換時に外れることがありません。

              

            トグルスイッチのリングにゴムが使われているので、これが劣化しているのを時々見かけますが、これは大丈夫でした。

             

            ナットは牛骨とブラスが組み合わさっています。このナットやノブ・ハードウエアの一部はこの時期(’80年前後)のアイバニーズと同じです。両方ともフジゲンで製造されていたからでしょう。

              

             

            アレンビックの影響があるのは否めませんが、GO900はアクティブ回路でなくパッシブです。ミニスイッチの切り替えはパラレル/シリーズでしたが、最初はハム/シングルのコイルタップかと思いました。現在の回路ではあまりお目にかからないパラレル/シリーズですが、出力は同じで音色が瞬時に変わるこの回路はプリセットスイッチとして結構イケますよ。

              

             

            ルックス的に派手さはないですが、存在感は抜群です。依頼主はレスポールよりもこれを使って行きたいとおっしゃる。そうです。ジャパンヴィテージもステージで使われてなんぼですね。

            楽器としてその音色が認められてこそ”日本の名器”として確立されていくことでしょう。

             

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            2019.06.21 Friday

            リペア ファイル その546

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              フェンダーUSA スタンダード・ストラトキャスター(アメスタ) /  フレットすり合わせ・調整

               

              米国製のスタンダード・ストラトを通称”アメスタ”と呼んでいますが、現行品は”アメプロ”(アメリカン・プロフェッショナル)になっているようです。どちらもカスタムショップを除けば米国ラインの最高峰です。したがってグレードの高い機種で間違いなのないギターです。

               

              弦高を下げたりゲージを変えたりするとフレットピークの微妙な凹凸に対応できず”ビビり音”が発生することがあります。その際は、フレットピークを整えて真っ直ぐにしてやる必要が出てきます。「フレットすり合わせ」します。

               

              またハイポジションにしたがってフレット上面のアールを弱くすることによってべンド(チョーキング)による”音詰まり”をなくすことも狙います。

                

              平ヤスリを使ってフレットピークの凹凸を消して各フレットのピークを整えます。ネックの剛性は1本1本違いますからロッドの調整をしながら、弦を張って真っすぐになった状態を仮定して「すり合わせ」します。

               

              ピークが揃ったら結果フレットが台形になっていますので、再び丸みをつけてやります。半丸ヤスリや三角ヤスリを使って角を落として丸くします。(厳密には頂点を付けるまでは丸くしません。わずか平面が残る程度で納めます。そうすることによってピークのバラつきを防ぎます)

               

              その後はヤスリでフレットに擦り傷ができているので、ペーパー各種を番手を粗いものから細かいものに換えながら磨いていきます。最終的にはバフで磨きます。

               

              完成! これで弦高を下げてもベンドしても音詰まりが解消されます。(フレット上面でラディアス指板のような効果を狙って削り調整しています)

                

              アメスタは22フレット仕様ですね。

               

              リテイナーは2個あります。3弦にもテンションを掛けることができますね。(3弦はナットへのテンション不足で軽めのサウンドになりがちです)

                

              ブリッジは2点支持。PUはもちろん米国製なので音の芯が太い。またアッセブリやハードウエアの素材の違いが音の違いに現れています。製鉄(鉄を作る技術)の違いが音の違いに現れるという人もいます。

               

              2トーンサンバーストは人気カラーリングですね。(ストラトっぽいから)

                

              ずっとこの機種が世界標準になっていました。そのため時代に合わせて徐々に細部も進化させています。現在ストラトがLM(ライトミュージック)の世界で一番使われているギターであることは間違いないでしょう。トップランナーですね。

               

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              2019.06.17 Monday

              リペア ファイル その545

              0

                Three S   w30   /  弦高調整・サドル交換・フレットおよび全体クリーニング

                 

                鈴木バイオリンのギターブランドだった”スリーエス”。愛好家は世界中にいるようです。生産は岐阜県恵那市で行われました。アメリカからわざわざ『恵那楽器』に来た愛好家は、私が渡した”スリーエス”の古いタグに大喜びしてくれました。さて、この楽器は市場に出ていたヴィンテージThree S で依頼されメンテナンス/リペアしました。

                 

                合板トップ&バックなれどマーチン社の28(ニッパチ)に近づこうとする当時の国産アコギの意気込みを感ることができます。

                  

                 

                ネックの状態はよかったので指板面とフレットをクリーニングし磨いておきました。

                 

                プラスチック製のサドルを牛骨製に交換しました。音の輪郭やクリアさが交換によって変化します。

                  

                サドルの出は低めなので、ブリッジピンからの立ち上がり角度を取るために弦の誘導溝をドリメルで切っています。

                 

                ブリッジ本体に巻き弦の逃げ(ボールエンドで弦を留めるために弦を折り返して巻いてあります。そのため太くなるので いくらピン側に溝が切ってあっても.ピン穴がきつくなる現象がおこります)を作るスリットを切っておきます。

                     

                これで収まりがよくなり弦交換のストレスも解消されますね。

                 

                ヘッド側にはロッドの頭が出ないマーチンスタイルです。ペグはロトマチック。中級機以上の装備です。

                  

                 

                出音はドレットノートらしく深みがあって音圧もあります。古いギターには新しいギターでは出せない”こなれた音色”があって人の琴線を揺さぶりますね。

                  

                 

                 

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                2019.06.13 Thursday

                リペア ファイル その544

                0

                  GIBSON ES-175 1965製 /  ネックヒール部のタッチアップ

                   

                  いつもお世話になっています、さすらいのギタリスト”土門秀明“氏のギブソンのフルアコES−175。’65年製ですからヴィンテージですね。全体からいい味が出ています。

                   

                  このネックヒール部の塗装割れだけは不自然な感じかして気になるとおっしゃります(あっちこっちクラックがあったり傷があるのですが、ここだけはアウトと言われる)。うーん・・・・うまく直せるかなぁ・・と心配しましたが、引き受けた以上はやらなくては。ヴィンテージ修理はきれいになってもダメなので思案します。

                    

                   

                  茶系と黒の染料系塗料をミックスしながら色合わせします。いきなり本番はまずいので似たようなピースで実験してから本番に挑みます。下手にマスキングするとテープを剥がすときに古い塗膜もいっしょに剥がれてしまうので、マスキングテープを掌に一度くっつけて油分を与え粘着力を緩めてから使用しています。

                    

                  薄めの塗料をほんのわずか盛っては乾かし盛っては乾かし、拡大鏡を使いながらタッチアップしていきます。手が震えます。(アル中ではないよ・・・)

                   

                  なんとか完了。(こんだけにも結構な時間がかかっています)ヴィンテージ修理はやり過ぎないよいに注意しています。やり過ぎたら元に戻せませんから・・・一歩手前で止めるのを理想としています。

                   

                  どこもここも枯れています。甘くて切ない音がします。

                    

                  土門さんは将来ジャズも弾くつもりだとか。ということは只今勉強中なのでしょうか?プロの方だからそれも射程距離にあるのでしょう。羨ましい。これを引っ提げてJAZZやったら渋いですよね。

                   

                  ラッカー塗装は経年変化で自然とクラックが入ってきます。そこが年輪を感じさせ ただの「中古品」ではなく「ヴィンテージ」としてくれるポイントのひとつです。ラッカー塗装のよさでね。ウレタンやポリエステル塗料では、いくら経年変化があってもこの枯れていく気配が感じられません。

                    

                  塗装が剥げるのもまたよし。

                   

                   

                  傷も味わいのうちになりますし、塗装の透け・焼けも趣きに奥行きを与えてくれます。

                    

                  べた褒めですが、特別骨董趣味はありません。人間には古いものを味わう感性が古今東西どこにもありますね。古い楽器は姿だけでなく音の変化もあります。ヴィンテージとして残っていく楽器はもともと音の素性のいいものが多く、それゆえ大切にされたり譲り受けられたりしています。結果古い楽器は、耳障りな倍音成分が減退してさらに心地よさを感じる音に変化していくことが多いです。

                   

                  ヘッドのペグの配列は最近のものより下がっています。この方がナットよりヘッド角度にプラスのベクトルが働きます。当然鳴りにも影響を与えます。

                    

                  オリジナルパーツが多く残っているうえコンディションもいい楽器でした。

                   

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                  2019.06.08 Saturday

                  リペア ファイル その543 (基本的な弦高調整のしかた)

                  0

                    Martin DM / サドル調整・ロッド調整・ナット調整

                     

                    すでに販売が終わっている”マーチンDM”。入門機として作られたと思うのですが、マーチンギターのツボを押さえた鳴るギターです。テーラーのアカデミーシリーズもそうですが、低価格で弾きやすくダイナミクスの優れた本懐的なギターを提供してくれました。

                      

                    トップは単板仕様でサイド&バックは合板。塗装はサテン仕上げです。ネックはXシリーズのようなストラタボンドネック(ラミネイトネック)ではなくマホガニー作りです。

                     

                    弦高が高いので調整します。アコギの場合12フレットで1弦が2ミリ、6弦が2.5ミリが標準になっています。それより高いと弾きにくく感じるでしょう。まずネックの反りを確認しますが、慣れないと分からないかも知れません。30センチ定規をネックに当てて中ほどで0.5ミリ以上隙間があれば「反って」いると考えます。

                      

                    ロッドで反りを調整します。その際必ず弦をゆるめて行ってください。マーチンは専用の6角レンチが必要です。ギブソンはネック側で箱レンチ使い調整します。メーカーそれぞれですので合うレンチを使ってください。

                     

                    ロッドを右回りに締めると「順反り」(弓なりになっている状態)を修正しますが、無理に回して壊してしまうといけないので初めは左回して緩めてみましょう。それから右回りして行くのが無難です。

                     

                    ”反り”には「順反り」「逆反り」のほか「元起き」とか「腰折れ」と呼ばれる14フレット以降で曲がることもあります。その場合はそれに応じた修理があるのでここでは論じません。

                     

                    ロッド調整して(弦を張って調弦してから)もまだ「弦高が高い」場合はサドルの底面を削って調整します。

                      

                    サドルを抜いて底面を削りますが、例えば12フレットで弦高が1弦2.75ミリ、6弦3ミリだった場合は、1弦2.75ー2=0.75 6弦3ー2.5=0.5と計算(現行の弦高から標準弦高を引く)してから、その答えの数の”2倍数”がサドルを削る目安となります。つまり1弦側は1.5ミリ、6弦側は1ミリ削ると丁度いい弦高になるのです。

                     

                    サドル底にラインを書いてから、写真のように横置きにしてブロックに張り付けたペーパーでその線まで削っていきます。(こうすると正確にサドル溝と密着することができます)

                     

                    本当は弦高調整にはナット溝も正確にする必要もあるのですが、専用のヤスリが必要になるので割愛します(このギターはまずそこを調整してからサドル調整しています)

                     

                    「弦高調整」は様々な要素を考慮して行うプロの仕事ですが、参考になるかと思い基本的なことを記してみました。くれぐれも注意して無理はしないでください。

                     

                     

                    DMのブリッジはブリッジピン穴からサドルに向って誘導溝が切られていますね。これがあるとサドルが低くなったとしてもピンからの立ち上がり角度が保たれてgoodです。

                      

                     

                    DMの力木はDシリーズより簡略されていますのが、ツボを押さえた感じになっています。ブリッジプレートはメイプル製でブリッジに対して斜めに張ってありました。(強度と軽量化を両立している)

                     

                    ワンリングの口輪飾りはヘリンボーンでトップ/バックのバインディングは黒の一重とシンプル。塗装が薄い分、軽快なサウンドでご機嫌です。マーチンらしい奥行きのある音がDMでも再現されています。

                      

                    やはりマーチンはマーチンなんね。

                     

                    関連ブログ:マーチンギター修理インデックス:http://9notes.jugem.jp/?eid=307

                     

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                    2019.06.04 Tuesday

                    リペア ファイル その542

                    0

                      Gibson CustomShop  LP カスタム / フレット交換(オーバーバインディング)・ナット交換

                       

                      ギブソン社カスタムショップのレスポール・カスタム。どこがカスタムショップ製のLPなのか外見からは判断きませんが、かろうじてヘッド裏のシールが証明しています。よくよく観察すると、塗装がとても薄いことに気づきました。PUも特製だと思います。

                       

                      フレット交換時期なので打ち換えますが、指板削りを最小にするためアイロンで修正してから指板調整することにします。(指板の反りがあるからだが、ロッドに余裕を持たせる意味もある)

                        

                      ナットは簡単に外せないほどしっかり付いていましたので、鋸でスロットを入れてから割るようにして外しました。

                       

                      フレットを抜き去り指板をストレートに修正します。指板アールも同時に確認。

                        

                      フレット溝の深さを確かめながら浅いところは専用のノコで溝を切り直しておきます。

                       

                      フレットは『オーバーバインディング』仕様にします。オリジナルはバインディングをフレットの形に切り出してあるギブソン特有のスタイルですが、バインディングが痩せてくると弦がその隙間に挟まることが、よく起こります。そのためリフレットの時に『オーバーバインディング』にするのが一般的です。

                        

                      フレット端をタングカッターで処理してから、さらに専用ジグで精度を出してから打ち込んで行きます。

                       

                      タングカッターで切り損ねたら、その短くなったフレットを再利用することを考え、ハイフレット側から(長い方から)作って行きます。

                        

                      ピークを平ヤスリで調整します。

                       

                      その後ピークを半丸ヤスリなどで修正してから、各フレットを磨いておきます。

                        

                      ナットも新たに牛骨で作製。

                       

                      完成。

                        

                      『オーバーバインディング』はこのように仕上がっています。

                       

                      だいぶヘタっていたロッドナットも新しモノに交換しておきます。

                        

                      アイロン矯正とフレットタング調整でネックの剛性を取り戻したため、ロッドの余裕も十分になりました。

                       

                      LPカスタムは比重の高いマホガニーを使っているので重いですね。しかし、それが粘り気のある太い音を作っています。

                        

                      ボディとトップ側・裏側にも”白・黒・白・黒・白・黒・白”のバインディングが入り、ブラックカラーをすっきりとした印象に換えています。同じレスポールでも”LPスタンダード”とは木材構成やカラーリングが違うので、この独特のスタイルに惹かれる”LPカスタム”ファンが生まれるのでしょうね。(つまりカッコいいからだよ)

                       

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