2017.03.31 Friday

リペア ファイル その303

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    フジゲン FG N  NLP  / スモークド乾燥 処理

     

    フジゲン製LPとカスタムSTとネック1本を「スモークド乾燥」処理を行いました。主な依頼は「ネックの反り」の矯正とその安定化のために「スモークド乾燥」処理を使うことです。同時にギター/ネックを燻すことによって「音響効果」アップを計りました。

    (煙で姿が見えない)

     

    30時間燻すことによって、塗装済みのギターにも「スモーク」効果が現れるようになります。熱と微粒子の煙成分が木材内の細胞に働きかけるからです。最近は食品の「スモーク」ブームでスモークしたハムや魚・チーズを食する人も多いかと思いますが、生の食品との変化がお分かりでしょう。水分が抜け食材にも煙の薫りが移っていますね。”薫煙”によって食材の細胞に変化が起きているのです。(天然の木材も同じように変化が現れる)

     

      

     

    燃焼庫からわずかながら飛ぶ”火の粉”がギターに直接かかることを防ぐために布カバーをしていますが、同時に大方のヤニ成分も取り除いてくれます。そこを貫通したヤニがギターに付くこともありますが、エチルアルコールで拭き取りして、バフで全体を研磨するので完了するとピカピカになります。全体的に若干焼け色が着くこともあります。

     

      

     

    持ち込まれたフジゲン製のレスポールの電装系は、ハイスペックなポット・ピッックアップ・シールド・キャパシティーに交換されていました。私が初めて見るものもあり勉強させてもらいました。

     

     

    チタン製(たぶん)のブリッジにアルミ製のストップテールピース。

     

     

    スモーク後に組み上げましたが、持ち込まれた時の配線の状態になるべく近くなるように 気をつけながら作業しました。楽器の心臓部である電装系はかなり完成形なので、「スモークド乾燥」処理によってどれだけ音響的に効果が出るか体感してもらいたいからです。

     

     

    フレットはフジゲン特許の「サークルフレット」です。指板端のラインを計算上延長して、その交点から弧を書くようにに指板上にフレット・ラインを引いてあるので、フレットが緩いアールラインを描いています(1弦が一番強いアールになり22フレットはそれよりゆるいアールになります)。こうすることによって弦がフレットと直角に交差するので”正確なピッチ”が出せるようになる とのことです。

     

      

     

    すでに良質な音のレスポールですが、生音で音量が上がったことを確認して出荷しました。さて大音量で弾くとどんな具合か?

     

    じっくり弾いてもらった依頼主からの、「ネックの剛性が上がって弦の振動効率が上がった」「今までの素性の傾向のまま良くなった」と感想を頂きました。「どこまでも澄み渡るクリーントーンが実に気持ちがいい」とは、うれしい知らせです。よかった!

     

     

    「スモークド乾燥」処理により素材の剛性アップや音の伝達性の向上、倍音成分の変化など「よく弾きこんだ状態」を作ることが可能になります。煙の効能おそるべし。

     

    次回は「カスタムST」と「EVHのネック」のスモークド乾燥処理のレポートをお届けします。

     

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    2017.03.13 Monday

    リペア ファイル その300

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      ギブソン J−200 / 「スモークド乾燥」処理・フレット交換(オーバーバインディング)ナット交換・サドル交換・ブリッジ調整 

       

      「激鳴り!」という謳い文句で入手したJ−200が「看板に偽りあり」レベルの鳴りだったので、「スモークド乾燥」処理を所望されました。2本まで入れることができますので、以前調整したことがあるモーリスMG1002もいっしょにスモークしました。(パーツ脱着、クリーニング・バフ代金は別途必要)

       

       

      ヤニ成分が指板やボディにのっています。煤とヤニをエチルアルコールで拭き取り、その後バフで磨きあげますので最初よりきれいになります。やや焼け色が着きます。(右写真はピックガードが半分取れかかったいたので外してからスモークした図)

       

            

       

      フレットがベタベタでしたので「リフレット」も同時に行いました。フレットを抜き去り指板面をストレートブロックを使い調整します。指板アールはゲージを使い計測し、それ(アール)を維持してあります。

       

          

       

      ”オーバーバインディング”仕様にします。(今回使用したフレットはジャンボタイプのジェスカー♯57110)ノコギリでフレット溝をクリーニングしながら溝幅を整えます。フレットタング調整を行いタングニッパーでフレット端をオーバーバインディング用にカットした後、さらにフレット端下面を専用ジグで整形します。

       

        

       

      ネックの反りを見ながらタングを微妙に調整して、ロッドに頼らないネックの剛性を作ります。その後フレットピークを整え、次に専用ヤスリでピークをつけ直し、最終的にはペーパーの番手を変えながらフレットを磨き上げて行きます。

       

        

       

      ナットも交換します(料金はフレット交換に含まれています)お預かりしたMade in USAの”DR”の弦。初めて使いましたが、なかなかいい弦でしたよ。ダダリオEJ16にパンチ力を加えた感じ。

       

        

       

      ブリッジピンからサドルピークまでの溝を再整形します。ここの立ち上がり角度が大切です。

       

        

       

      完成。サドルも新調してあります。

      ギブソン特有の太いフレット/ジャンボフレットをオーバーバインディング処理してあります。

       

        

       

      さて、その鳴りはいかに・・・  ドーンと深い胴ならではの低音 と素材密度が上がった効果による倍音が"きらびやか"になっています。ゴージャスなサウンドです。やはりJー200はこうでなくっちゃ。メイプルバック・サイドはローズとは違い、メローな響きがありますね。Jー200の素材構成はアーチトップのジャズギターと同じです。この辺りがバイオリン属を生業としてきた「ギブソン家」の作りの継承が感じられます。 「マーチン家」との違いが現れていますね。

       

        

       

      依頼主にもこの鳴りの変化に納得していただきました。スモークの香りがお酒に合うって言ってくださりました。

       

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      2016.10.06 Thursday

      リペア ファイル その267

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        77ギターズ ALB-1  / スモークド乾燥処理・電装系交換・ナット交換

         

        ヘッドウエイのラインナップに連なる「SeventySeven Guitars」です。細部まで手が抜いていない楽器ですが、これといった特徴がないサウンドでした。そこではるばるやって来てくださった依頼主は「スモークド乾燥」を希望され、前回のブログで紹介させてもらった「テイラー」といっしょに薫煙しました。

         

         

        30時間燻されたギター。全体的に「焼け色」が付いています。ヤニ成分も多いのですが袋掛けしているので本体には多く付着しませんが、それでも油分が表に付着します。それをエチルアルコールで拭き取ってからバフで磨き上げるので、ギターそのものは綺麗な状態です。(若干、燻製の香りがしますが・・・)

         

          

         

        ローズ指板は塗装膜がないので煙が木地に直接届き、「スモークド乾燥」処理によって”鳴るネック”になって行きます。フレットのヤニをスチールウールで擦り落としました。

         

         

        弦振動をネック側で受け止める「ナット」は「音作り」の基本です。牛骨ブロックを精度高くナットへ加工します。

         

          

         

        ヘッドスタイルは”ジャズギター”でよく見かけるラージタイプです。音の輪郭がしっかりしますね。

         

         

        「スモークド乾燥」処理のためパーツを全部外しました。そのパーツの電装系(ポット・コンデンサー・アウトプットジャック・シールド)を一新します。CTS製のポット・スイッチクラフト社のジャック・オレンジドロップ・ベルデンワイヤーといった具合です。この交換によって情報量が増えますよ。PUキャビティの中を導電塗装しておきました。

         

          

         

        「スモークド乾燥」によって生鳴りがまたく違ったものに。もうすでに出音が大きいです。その元気のある振動が電装系交換によって減退することなくなく出力されますので、PUを交換することなくグレードアップされました。反応が早く、サスティーンも向上しています。セミホローギターの良さであるフロントPUのメローなサウンドが秀逸でした。

         

          

         

        『スモークド乾燥』を施すと細胞レベルで下記のような変化があると思われます。

        「木材の細胞には、多くのセルロースと少量のリグニン・ヘミセルロースなどの物質があり、セルロース間に結合水が存在する。その結合水がスモーク効果によって減っていくと、セルロース同士が結びつき強固になっていく。そのため剛性がアップし、また音の伝導率がアップされる」科学分析はしていないですが、このように考えています。

         

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        2016.10.02 Sunday

        リペア ファイル その266

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          テイラー・アコースティック200 / スモークド乾燥処理・ナット交換・サドル交換(オフセット加工)

           

          遠方からはるばるやって来てくださった依頼者が、持ってみえた2本のギター。袋掛けしてスモークするべく乾燥庫に入れました。(1本分の脱着料金は別途かかりますが「スモークド乾燥」処理は1本も2本も同じ金額でお引き受けしています。)

          そのうちの一本は、Taylorの生ギター仕様でドレットノートに匹敵する容量を持っていましたが、若干 Dタイプとしては軽い音でした。

           

           

          30時間以上煙で燻しています。温度も楽器に負担にならない程度に上げています。冷燻で試みたこともあったのですが、ある程度の温度があった方がいい結果が出るのでこうしています。その分神経は使いますが。ギターが燻し効果で少し「焼け色」が付いているのが解るでしょうか?

           

            

           

          指板についたヤニをスチールウールで磨いて落とします。ボディ、ネックのヤニ成分はアルコールを使い拭き取っています。この機は”つや消し”だったのでバフで磨くことはできませんが、そうでないケースではバフで仕上げています。

           

           

          「スモークド乾燥」で材木の振動率アップと剛性アップが計られましたが、チューンはそれだけでは完成しません。ナットとサドルを交換して希望の音質に近づける設定をします。ナット形状も「音つくり」には重要なパーツです。またトラスロッドも微妙に調整しています。ネックの鳴りが全体のサウンドの味付けに欠かせません。

           

            

           

          サドルの長さ決めのショット。私はベルトサンダーを立てて使っています。(後ろで覗く美女は昔作ったコラージュ作品です)ブリッジピン穴にテーパー加工されていませんでしたので、逆笠状に加工しています。こうするとピンの脱着が楽になりますね。

           

            

           

          オクターブでのピッチの狂いを最小限にするため「オフセット」加工も施します。アコギはエレキのようにサドルを可変できませんので、弦のゲージを変えるとピッチが合わなくなります。

           

           

          スモークするため一旦パーツは全て外してありましたが、組み直しました。後付けのピックアップは「フィシュマンのレアアースブレンド」。テーラーのサウンドとは違いますが、マグネットとマイクの組み合わせで”エアー感が醸し出せるので人気があるシステムですね。

           

            

           

          完成。 音量、サスティーン共に改善されました。倍音も増えて音に深みが出たと思います。本当はもう少し音量が稼げると踏んだのですが、バックの剛性がやや不足しています。これはアーチバックスタイルのプレスバックのためだと思いますが、ここのタップトーンがトップに対してもう少し高くなると、倍音が複雑になってDタイプボディの特性をもっと出たかも。依頼主からは「ごまかしがきかない楽器に変わった」とコメントを頂きました。

           

           

          遠方からの来客ご一行様は依頼主のほか奥様・お嬢さん。小さい子には楽器工房はつまらなかったかも知れませんね。ごめんなさい。少しでも恵那の観光を愉しんでもらえたらと、「栗菓子」で有名なご当地グルメと近場の温泉をご紹介しました。

          そうですね。恵那近郊にはたくさん温泉があるんだった。”温泉巡り”がてら楽器を持って9notesへいかがですか?

           

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          2016.09.04 Sunday

          リペア ファイル その260

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            M・J フランクス     ドレットノート・タイプ / スモークド乾燥処理・サドル交巻

             

            過去に「ギターマガジン」で紹介されたという米国・ミシガンのルシアー ”マイク・フランクス”製作のドレットノートタイプのギターです。D−28モデルです。どこを見ても細かいところまでよく作られている楽器で材料も一流です。アディロンダック・スプルースTOPでバック・サイドはブラジリアン・ローズウッドの柾目材です。

             

             

            音色もバランスの取れた格調高い感じでしたが、これだけの素材と作りなら「もっと鳴ってもいい」だろう、と正直感じました。依頼主もそう思われたと察しますが、「もっと音量を」「芯のある音で低域はズドーン」が御希望です。ブルーグラス奏者なので音量は大事な要素だと感じました。

             

            「スモークド乾燥」処理に入ります。接着にはニカワ、ピックガードはセル製のため通常より温度を低めに設定し、長めにスモークすることにしました。ついでにバンジョーの駒もいっしょにスモーク。

             

              

             

            燻しスモーク効果で乾燥が進みます。全体的に”焼け色”が付きます。スモークの匂い残りますが、そんなにきつくないと思います。

             

              

             

            ギターに”袋掛け”してあるのでヤニはこちらに主に付着しますが、全体を油分が覆うのでアルコールで拭き取ります。そのあと全体をバフで磨き上げるのできれいに仕上がります。

             

             

            オリジナルのロングサドルには駱駝の骨”キャメルボーン”が使われていましたが(ナットはそのままで再整形して使いました)少々弦の食い込みがありましたので、『匠』ブランドの牛骨に交換することにしました。この素材は厳選されているうえ特殊加工されているとのことです。実際、削ってみますと極めの細かいカスが出ます。密度が高いので伝導率に優れています。

             

              

             

            最近のマーチンもそうですがこの機も、「ロングサドル」底面に掘り込み加工してあります。なぜかと言うとロングサドルの端っこは欠けやすくなるのです。昔は底面を接着してありましたが、将来交換がするのが前提に作ると接着するのはまずいでしょ。そうなるとこの段差加工が正解である訳です。 オフセット加工も施しました。

             

              

             

            ヘッドもヴィンテージ・マーチンをお手本に忠実に再現されています。

             

              

             

            材料の選別が行き届いていてネック材・駒材・指板材も一級品です。米国・カナダの材木商からより選っていますね。かの国には材木の豊富なストックがあるのでしょう。それを「スモークド乾燥」処理すれば、そのポテンシャルをさらに引き出してやることができます。

             

              

             

            トップ・ネックの剛性が上がり、サスティーンが伸び、音の立ち上がりが改善されます。また「音量アップ」もその特徴です。さて、依頼主の感想は・・・

             

             

            (メールを頂いたのをご了承得て前文を記載させて戴きました)

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            9notes 勝田様

            ご連絡遅くなりました。
            先週末に時間を作りギターの報告をさせて頂こうと
            考えていましたが、仕事等要件が入り中々ギターを
            弾く時間をまとめて取れませんでした。

            本日、時間が取れほぼ一日(飛び飛びでしたが)ギター
            を弾く一日が過ごせました。

            お送り頂いた日に感じ書かせて頂いた事と同じ感想です。
            ひじょうに気に入っておりまさす。このギター個体の
            特徴でしょうか?20〜30分程弾きこんでより鳴り始め
            ました。楽器店で試奏した時は、1時間程弾き込んで
            俄然鳴りだしました。定期的に弾く事でこのタイムラグ
            は無くなりました。おそらく今回も同じ様に弾く事で
            タイムラグは、無くなると思います。

            今回も途中から除湿機を使い湿度53〜55%で弾きまし
            た。前回の第一印象どうりの鳴りです。とにかく音量が、
            驚く程出ています。低音弦を思いっきりピッキングしても
            音がつぶれる事なくガツーンとストレートに反応します。
            低域から高域まで、音の粒がそろっている感じで、コード
            を弾いても一つにまとまった音が、気持ち良く出ます。

            ハイフレットでスケール弾きをして気ずいたのですが、サ
            ステーンも気持ち良く響きます。サムピックとフィンガー
            ピックをつけてのフィンガーピッキング。サムピックと指
            先でのフィンガーピッキング。どちらのピッキングもいま
            までは高音弦が、やや詰まった感じがありましたが一音ずつ
            の音の粒と前回報告させてもらった、高域の太さとサステ
            ィーンの具合か、こちらも良い感触です。レスポンスが良く
            なりました。

            前回も書かせて頂きましたが、弾いていて楽しい楽器です。

             

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            2016.06.11 Saturday

            リペア ファイル その240

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              エドガー・メンヒ / 表板割れ補修・ブリッジのダブルホール加工・スモークド乾燥処理・駒再接着

              ある工房の閉店に伴い当工房に「チューンナップとスモークド乾燥」の打診がありました。私が適任かは解りせんが、精一杯の仕事をすることにして お引き受け致しました。当工房は岐阜県の山の中にあり首都圏からは遠く離れていますが、少しずつそういう依頼が増えています。ありがたいことです。

              さて、弾き込まれたクラシックギター(エドガー・メンヒ製作)のチューン・改良作業に入ります。「スモークド乾燥」処理することを前提に故障箇所の修理と各種チューンを施します。


              表板が変形していました。これをどのように改善するか検討します。トップの矯正をするか否か。表板が凹んでいるのにも関わらす弦高は適正を保っているところを見ると、極端に乾燥が進んだ結果凹んでいる訳でないことが解ります。ただ中央に亀裂があることから、内部で湿度調整してやることに。湿度により割れが復元した頃を見計らい中央の亀裂部を接着しました。
                
              湿度調整でも表板の凹みは完全に修正できませんが、やや戻りました。力木の補強材を入れて「矯正」するのは、音質が変化するので選択しませんでした。

              ブリッジの弦通し穴を「ダブルホール」にして欲しいとの要望で、ブリッジを加工するため「外す」ことにしました。(ギターに張り付いた状態ではダブルホールにすることは不可能)照明用電球でブリッジを暖め(周りが焼けないように養生してある)ながらパレットナイフでブリッジを外して行きます。
                

              ブリッジを外したら表板び変形がかなり改善さえました。ブリッジが「つっかえ棒」になっていたのでしょう。この楽器は内部が塗装されていましたが、珍しいことに表板の裏側も塗装されていました。バック・サイドの内部を塗装してある楽器は、ときどき見かけますが、表板の裏側まで塗装されているのは、初めて見ました。


              ブリッジを外した状態で「スモーク」しました(フレットも打ち換えるので、フレットも抜き去った状態でもある)スモーク乾燥により木部の安定が増します。30時間燻します。その間、温度管理と煙の量を調整しながら薪をくべる作業を続けます。火の粉が塗装膜を犯すのを防ぐため、通気性のある袋に入れています。
                
              「スモーク」後は、エチルアルコールで煙のヤニ成分を拭き取ります「スモーク」により全体がやや燻し色(薄い黄色)になります。「スモークハム」と同じような匂いがつくのは、同じ技法だからです。これで一杯やれる、と言った人がいました。最後はバフで磨き上げます。

              弦と通し穴を「もう一箇所づつ」増やします。全部で12個の穴が開いていることになります。ダブルホールの利点は、サドルへの立ち上がり角度が強くなることから、サドルへの圧力が増すことです。その結果、音量アップが期待できます。また振動ロスが減るのでダイナミックレンジも増えるでしょう。
                
              ある程度表板が矯正されている状態で、再びブリッジを接着しました。ダブルホール化した結果、表板もいい状態に改善させてまずまずでした。この楽器の表板は、”ベアクロウ”が入っていました。(”ふ”が入っている。杢とは違う)最近アコギでは、この材を好んで使う製作家が増えていますが、クラシック製作家はほとんどいません。ドイツからカナダへ移住したメンヒは、自由な発想をお持ちですね。硬くて軽い材を選んだ結果だと思われます。

              この後、指板のアール加工、背の高いフレットに交換、水牛素材でのナット・サドル加工、オフセット加工に続きます。

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              2016.06.05 Sunday

              「栃の耳付き材のテレキャス」販売

              0
                ワンピースの「栃」ボディ/「イタヤ楓」ネックに「スモークド乾燥処理」と「漆生地固め」を施したテレキャスをHPのShopより販売します。 通常販売価格¥320,000(税込み¥345,600)のところ、試奏に使用したため若干の傷が残りました。
                そこで特別価格として¥265,000(税込み・送料込み・ハードケース付きでご提供します。



                《仕様》  
                ボディ:                 栃の木の耳付きワンピース材
                ネック:                  イタヤ楓(杢あり)
                指板:                   21フレット パーフェロ材
                フレット:               ジムダン社製 6105
                指板ラディウム : 10インチR
                ナット幅 :42ミリ   12フレット : 52ミリ
                ナット:                 オイルドボーン
                ペグ:                    ゴトー社製クルーソンタイプ SD510
                ブリッジ:              JOE BARDEN JBブリッジ・サドル Kits
                ピックアップ:        LINDY FRALIN「TELECASTERSET」
                3WAYスイッチ     CRL社製
                ポット :             CTS 250Ω
                アウトプットジャック: スイッチクラフト社製
                コンデンサー:        SPRAGUE オレンジドロップ
                配線材 :                BELDEN ♯8503
                ハンダ:                 ケスター ”44”
                弦ゲージ :             0.10〜0.46インチ
                塗装:                    漆生地固め・生漆/擦り漆仕上げ
                重さ:       3.5kg

                『表皮側の形がそのまま残っている栃の木』のテレキャス・ボディ材を使用しました。表皮は細胞が粗いので燻して細胞を締める「スモークド乾燥」処理を施し、さらにその細胞を漆液を染み込ませて固める「漆生地固め」して楽器材として使えるようにしました。
                  

                アウトプットジャックはMONTREXのアルミ削り出しのジャックプレートです。木ネジでボディにダイレクトに止めるのでガタつきがありません。
                  

                ブリッジにはJOE BARDENのJBブリッジとサドル Kitsを使用。サドルはブラスの3連タイプですが、オクターブチューニングしやすいように斜めに振ってあります。またテレキャスブリッジは前部が浮きやすい構造でしたが、JBブリッジはそこに2本ビスが増設されています。ピッキングの邪魔をしないように1弦側の角もカット加工されています。
                  
                ピックアップはLINDY FRALINの「テレキャスターセット」を搭載。ヴィンテージ・タイプのPUで正統的な音です。フロントは"スイート"で太く音域も広く、リアは高域が特徴ですが耳障りでなく各弦のバランスもいいです。ハーフトーンも味があります。

                ナットはオイルドボーン、ペグはゴトー社製の「SD510」。ネックは杢が入っている「イタヤ楓」です。トラスロッドは2wayタイプで指板側から入れてありますが、強度を出すため黒檀を「スカンクストライプ」状に埋め込んであります。指板はパーフェロ材でフレットはジムダン6105、ドットはパールです。
                  

                《特徴》
                栃の一枚板を「スモークド乾燥」処理したうえ「漆生地固め・摺り漆仕上げ」しました。また木の自然な形を生かした作りとなっているため、世界に一本しかない楽器(Only One Guitar)となっています。

                栃材はアルダーに似た材であり、中域が厚く深みのあるサウンドでバランスよく鳴る材です。それを「スモークド乾燥」することにより、音伝導率をアップさせ、レスポンス・サスティーンの向上を図っています。

                「スモークド乾燥」は木材を「燻す」乾燥方法で木材内のヘミセルロースを減らす効果があります。木材は経年変化とともにヘミセルロースが減っていくので、それを燻すことで促進しているのです。枯れた音というより10年くらい使用した「よく鳴る」頃の音を目指しています。

                「漆生地固め」は、スモークした細胞を漆の浸透性を利用して固めてしまい、安定させるねらいです。さらに漆を繰り返し塗り「摺り漆(すりうるし)」で仕上げました。塗膜は数ミクロンで薄く仕上りボディ振動を妨げません。

                このテレキャスターは、木曽の伝統的な木と技術を駆使した楽器となっています。


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                2016.05.07 Saturday

                9notesオリジナル「栃の耳付き材のテレキャス」(東京ハンドクラフトフェア出品モデル)

                0
                  5月21日22日に東京錦糸町で行われる「東京ハンドクラフトフェア2016」に出品する楽器を紹介します。ワンピースの「栃」ボディ/「イタヤ楓」ネックに「スモークド乾燥処理」と「漆生地固め」を施したテレキャスのご紹介。

                  国産材を使いネック・ボディとも「擦り漆仕上げ」。

                  『表皮側の形がそのまま残っている栃の木』のテレキャス・ボディ材を使用しました。表皮は細胞が粗いので燻して細胞を締める「スモークド乾燥」処理を施し、さらにその細胞を漆液を染み込ませて固める「漆生地固め」して楽器材として使えるようにしました。
                    

                  ピックアップはLINDY FRALINの「テレキャスターセット」を搭載。ヴィンテージ・タイプのPUで正統的な音です。フロントは"スイート"で太く音域も広く、リアは高域が特徴ですが耳障りでなく各弦のバランスもいいです。ハーフトーンも味があります。
                    

                  ブリッジにはJOE BARDENのJBブリッジとサドル Kitsを使用。サドルはブラスの3連タイプですが、オクターブチューニングしやすいように斜めに振ってあります。またテレキャスブリッジは前部が浮きやすい構造でしたが、JBブリッジはそこに2本ビスが増設されています。ピッキングの邪魔をしないように1弦側の角もカット加工されています。
                    
                  アウトプットジャックはMONTREXのアルミ削り出しのジャックプレートです。木ネジでボディにダイレクトに止めるのでガタつきがありません。

                  ネックポケットには私のサインが・・・


                  ナットはオイルドボーン、ペグはゴトー社製の「SD510」。ネックは杢が入っている「イタヤ楓」です。トラスロッドは2wayタイプで指板側から入れてありますが、強度を出すため黒檀を「スカンクストライプ」状に埋め込んであります。指板はパーフェロ材でフレットはジムダン6105、ドットはパールです。
                    

                  「木の耳付き材」(木の表皮)をエルボーカットに見立てあります。漆で固めてあるので剥がれて来ることはありません。漆は「木地固め」のため2回、さらに「擦り漆仕上げ」のため5回塗ってあります。漆は浸透性が高いので木目が浮かび上がって見えます。塗装膜は数ミクロンの単位ですので「極薄」です。静電・薬品・湿度には強いですが、打痕には弱いです。(ただ化学塗料と違い傷も自然な感じに付くので「風合いが増す」と考えていただくと有り難いです)


                  《仕様》  
                  ボディ:                 栃の木の耳付きワンピース材
                  ネック:                  イタヤ楓(杢あり)
                  指板:                   21フレット パーフェロ材
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                  指板ラディウム : 10インチR
                  ナット幅 :42ミリ   12フレット : 52ミリ
                  ナット:                 オイルドボーン
                  ペグ:                    ゴトー社製クルーソンタイプ SD510
                  ブリッジ:              JOE BARDEN JBブリッジ・サドル Kits
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                  ハンダ:                 ケスター ”44”
                  弦ゲージ :             0.10〜0.46インチ
                  塗装:                    漆生地固め・生漆/擦り漆仕上げ

                  《特徴》
                  栃の一枚板を「スモークド乾燥」処理したうえ「漆生地固め・摺り漆仕上げ」しました。また木の自然な形を生かした作りとなっているため、世界に一本しかない楽器(Only One Guitar)となっています。

                  栃材はアルダーに似た材であり、中域が厚く深みのあるサウンドでバランスよく鳴る材です。それを「スモークド乾燥」することにより、音伝導率をアップさせ、レスポンス・サスティーンの向上を図っています。

                  「スモークド乾燥」は木材を「燻す」乾燥方法で木材内のヘミセルロースを減らす効果があります。木材は経年変化とともにヘミセルロースが減っていくので、それを燻すことで促進しているのです。枯れた音というより10年くらい使用した「よく鳴る」頃の音を目指しています。

                  「漆生地固め」は、スモークした細胞を漆の浸透性を利用して固めてしまい、安定させるねらいです。さらに漆を繰り返し塗り「摺り漆(すりうるし)」で仕上げました。塗膜は数ミクロンで薄く仕上りボディ振動を妨げません。

                  このテレキャスターは、木曽の伝統的な木と技術を駆使した楽器となっています。



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                  2016.04.14 Thursday

                  リペア ファイル その232

                  0
                    マーチン 000−15M  / スモークド乾燥

                    乾燥庫で2本同時に「スモーク」しています。2本までは同一料金でやらせてもらいます。一本あたりの単価が下がりますよ。ただ一本は脱着料金が別途かかります。

                    オールマホガニーの000−15Mです。スプルーストップにはないマホ特有の甘い音が特徴です。ややローが不足しているので「スモークド乾燥処理」と「細部のチューン」で改善を図ります。



                    ブリッジピンからサドルへの立ち上がり角度を稼ぐために弦の誘導溝を拡張しました。またナットの溝にも手を入れて調整しておきました。支点となるところを見直すことも大切です。サウンドホールのエッジ処理などは丁寧な仕上がりで、さすがマーチンだと感心しました。

                    写真の露出が悪かったのか暗くてほかのショットをお見せできなくてすみません。マーチン000は24.9スケールを採用してありOMよりやや短いスケールです。テンションがOMより軟らかく感じるのはそのためです。クラプトンが使っているのも000タイプでベンディングなども掛かりやすいのでOMよりもロック寄りのプレーには適していると思います。(この000ー15Mは25.4インチが採用されていると教えていただきました。000なのにロングスケールとはなぜ?と思いましたが、そのようです)

                    ダダリオのフォスファー弦EJ26(011セット)を張りました。このセットは最近人気ですね。演奏性が高いからでしょう。

                    「スモーク」+「細部のチューン」効果でローも出ています。マホトーンを残しつつクリアーなサウンドです。
                    後日談。スモークするため内部に取り付けてあったPUシステムを外し、その後再接着しましたが、練習中「音が出なくなった」とメールが入りました。気をつけてやっているのですが、どこかで負荷が掛かったのか・・知り合いの方に見てもらったようですが、すみません。

                    アコギの後付けPUシステムには、ときにこういう事故が起こります。やっかいなのが両面テープで 強すぎても外せなくなるし、弱すぎると落ちてしまうし、この手の問題の本質的な解決方法はないのが現状です。タカミネのように製作時にクリップを胴材に組み込んでしまうのが最適なんです
                    が。

                    --------------------------------------------------------------------------

                    LAG T100ACSE / スモークド乾燥・ナット交換・サドル交換(オフセット加工)・ブリッジピン交換(スモーク処理済み)

                    フランスのメーカーであるLAG社のエレアコです。この機はボディ厚の薄いタイプですので音に深みが出ません。「箱鳴り」感はあるので、ネックをもっと響かせてバランスを取りたいところです。



                    30時間「スモーク」しました。油分が若干残りますので、全体をアルコールで拭き取ります。


                    練り物製のブリッジピンが付いていたので、それを「スモークド乾燥」処理したエボニー製のピンと交換しました。それに合うようにピン穴を修正します。サドルも牛骨で作り変えました。オクターブのピッチが合うように「オフセット加工」をサドルに施してあります。
                      

                    ナットも牛骨に交換しました。音の立ち上がりを良くしたいので、ナットと弦との接地面積を点で捉えるような形に整形しました。ロッドを調整してネックにテンションを与え、ネックのバイブレーションを引き出したいです。
                      

                    弦長が650ミリあります。これがマーチンやフェンダーよりも長いスケールでして、その結果 テンション感はありますがパワーが出ますね。箱鳴り感はそのためでしょう。そこに「スモーク」によって剛性の上がったネックのバイブレーションを加えました。
                      
                    音量が上がって張りのある出音です。ボディ厚の薄いギターとは思えないくらいです。

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                    2016.03.08 Tuesday

                    リペア ファイル その223

                    0
                      フェンダー・カスタムショップ・ストラトキャスター / スモークド乾燥処理・ネックポケット加工

                      ヴィンテージストラトをお持ちの依頼主から、入手されたカスタムショップのSTを少しでもヴィンテージ・トーンに近づけたいとのご希望を頂きました。私はよく鳴るヴィンテージSTの実力を知っていますので、簡単に「スモークド乾燥」処理で”そうなります”とは言えませんでした。が、可能な限りの努力しました。


                      送られて来た楽器はネック裏の塗装をご自身で剥がしておられました。塗膜がないことは湿度の影響を受けやすいですが、スモークを吸い込みやすくなっています。「スモークド乾燥」処理でネックの剛性を上げることにより、サウンドの立ち上がりと生鳴りの向上を目指します。


                      30時間以上スモークします。煙だけでなく温度も上げます(「サーモウッド」のように高温処理ではなく、あくまで「燻す」ことが主です)ので管理が大変ですが、塗装がされていても細胞レベルでの変化が現われます。ネックが燻されて色が付きました。
                       
                      「燻す」ことによりヘミセルロースの減退、セルロース間の結合水が減りセルロース間の結びつきが強固になる等、音伝達率が上げると言われます。

                      塗膜には薄っすら油分が付着します。主に広葉樹を使っていますが、樹木には油成分があります。針葉樹は燃焼温度を上げることはできますが、油分が多過ぎるので基本使っていません。油分はエチルアルコールで除去し、最終的にはバフで仕上げています。
                        

                      ネックの剛性が上がりネックのバイブレーションを受けとめるためには、ネックポケットの精度が重要になってきます。この楽器には「0.2ミリのシム」が挟めれていましたが、それを外してポケットを「ルーター加工」します。


                      仕込み角度が付いていますので、実寸図でそれを確認しルーターのテンプレートに写します。行き成り本物に加工して失敗は許されないので、サンプル器で一度試し加工し(左写真)それから本番に挑みます。
                        

                      オリジナルのポケット底面(左) 加工後のポケット底面(右)ほんのわずかな角度が付くだけですが、シビアな精度が要求される部分です。この角度が「サドル高」を決定します。サドルからプレートまでの立ち上がり角度が重要なうえ、ブリッジはアーミングするのでフローティング設定なので、そこまで計算して「仕込み角度」が決定されます。
                        
                      また「弦高設定」も先に読んでおかないといけません。依頼主の設定は最終フレットで6弦7/64インチ(2.778ミリ)、1弦6/64インチ(2.381ミリ)〜5/64インチ、4/64インチと大変へ低く、またフローティングは、G弦の開放で1.5音アップを基本とされていました。


                      上の設定で「スモークド乾燥」処理をされたこの楽器の評価は、ヴィンテージとの差はあることは認められたうえ、”これまで手にした現行ストラトの中で最高”とのお褒めの言葉を頂きました。音の立ちあがりの良さ、”弾き込んだ個体かのように無駄な帯域が消えて聴きやすい音”になったと言われます。ありがたや。

                      依頼に応えるのが私の仕事ですが、自分でよくなったと思っても実際依主が、どう評価してもらえるかドキドキでもあるのです。


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